風鳴りに

風が強い。風が強いと今でもちょっと怖い、という夫の言葉を思い出してふふっと笑ってしまう。

私自身は、叩きつけるような暴風雨を窓の内からいつまでも眺めている子供だった。音も振動も怖くはなかった。雷だけは別だったが、それは自分のところに落ちることを恐れていたからだ。5歳ぐらいの頃、母から「マンションには避雷針があるから大丈夫」と聞いたのちは安心して鑑賞するようになった。

自分の身に危険が及ぶかどうか、その一点だけを気にしていたということだろう。容赦なくプラクティカルな、子供の頭の中。そんな世界を生きていたことを、たまに思い出すし、覚えていたいと思うので、書いている。